Part.2
顧客以上に顧客を知り、顧客以上に考える

司会皆さんの仕事について教えていただけますか?

小宮私が携わっていた大手証券会社のプロジェクトは非常に規模が大きいです。ですから、多岐に渡るPM(プロジェクトマネージャ)の仕事の中でも重要になるのが「計画」です。例えば、小さいピンポン玉は転がすのも転がる方向を修正するのもたやすいですが、大きく重い球(ボーリングの球を大きくしたものをイメージしていただけばいいかと思います)を転がすには大きな力が必要ですし、途中で軌道修正するのは大変です。同じように規模が大きなプロジェクトは途中での軌道修正が大変になるので、しっかり進むべき方向とゴールを見定めた計画を立案してから、大きな力で動かす必要があります。限られた時間の中で、すべてのステークホルダとしっかり議論して、計画を立案することは非常に大切なことなのです。

大久保私は小宮さんが統括PMをした巨大プロジェクトに参画していたことがあり、そこでは基盤や運用に関わる箇所のPMをしていました。特に運用に関わる箇所は作り上げた業務やシステムを24時間365日、どういった状況であっても安定的に稼働させ続ける必要があり、社会情勢や顧客ビジネスイベント、顧客のシステムの使い方などにアンテナを張って対応をすすめていました。そのプロジェクトは全体で500人以上のメンバーが参加するプロジェクトでしたので、全員をゴールまでリードするために、最初の計画がいかに大切かということを痛感しました。

小宮もちろん、状況に応じて柔軟に変更することもありますが、最初に「信じられるもの」つまり計画をメンバーと共有しなければいけない。そしてそこにはプロジェクトの骨格となる基本的なことがしっかり記載されていなければいけないと思います。例えば、どういった業界でどういったポジションの顧客なのか?どういった技術があって、どれが適しているのか?どういったリスクが予測されるのか?社会情勢は?メンバーは?社外のパートナー会社との役割分担は?とかね。あいまいなまま「なんとかなる」と思って始めてしまうと、往々にしてうまくいかないことが多いですね。

南側私の仕事は、そういったプロジェクトが動く前の段階で、顧客とNRIが「これをやるんだ」と企画するところを担当しています。この仕事を「営業」というと分かりやすいのかも知れませんが、NRIには営業というキャリアフィールドはないですし、そもそも私はアプリケーションエンジニアなので、うまく伝えるのが難しいですね…。しいていえば「プロデューサー」でしょうか。

小宮南側さんは元々いまの顧客のシステムをつくってきたわけだから、顧客も営業とは見ていないだろうね。一緒に作ってきた人が、その経験と知識と関係性を活かして、他の企業には真似できないところまで気を配り、動いて、顧客の業務を改革しようとしているわけでしょう。簡単にいうと、顧客の「仲間」に近いかもしれないね。

南側確かに、他の企業には真似できないことをしている自負はありますね。顧客の事業計画に対して提言をすることもありますし、また、システムは顧客の資産にもなりますから、ファイナンスに近い話もします。顧客より顧客の業務や顧客の利益になることを知っている、くらいのつもりでいますね(笑)。

八木顧客をよく知るという点は、テクニカルエンジニア(私)も同じですね。提案をする際には、事前に顧客と徹底的に打ち合せをします。プロジェクトの規模や内容に合わせた技術や処理方式のこととか。それに、NRIは提案して、つくって、終わり、という会社ではないので、つくってからの運用でも顧客と接していきます。ですから、顧客や顧客業務に対する知識には自信があります。

司会テクニカルエンジニアも顧客と会うことがあるんですね。

小宮そもそも、NRIに顧客と会わない仕事なんてありませんよ(笑)。パソコンの前にずっと座っているような、そういう会社ではないです。

八木そうですね(笑)。テクニカルエンジニアとか、基盤技術者と言うと、何だか技術ばかりに目がいっている人たちに見えるかも知れませんが、顧客との関係は他の方々と同じですよ。顧客の近くにいて、顧客のビジネス(やりたいこと)を成り立たせるために、基盤としてはこうしたい!という話ですから。

南側NRIの社員にとっては、顧客の懐にどんどん入っていって仕事をするということは当たり前のことですので、学生さんには誤解しないで欲しいところですね。